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闘道館20周年記念特別対談
ターザン山本×闘道館館長
⑮深化する"業態"
館長:先生、そろそろ時間きちゃいそうですが、もう少し大丈夫ですか。あと30分で残り19年を振り返りますね(苦笑)
ターザン山本:はい、やってください。
館長:やっぱり限界があったんですよね。時間料金制だけでやるというのは。
ターザン山本:うん。限界あったね。
館長:入るときに入場料として390円かかりますっていうのは。
まんが喫茶の感覚でいくと、当たり前なんですが、わざわざ電車乗ってきて、本やビデオを探しに来る人からすると、
「中古販売をやってるって聞いてきたのに、入るだけで金取んの?」って感覚の人が結構いて。
「本を選ぶだけで、お金がかかるのかって、どういうことだ?」って(笑)
「えー、いやここは喫茶スペースで、珈琲のんでゆっくりしていただく場所なので」って説明しても、
「信じらんねえ、棚みるだけで金とられた」ってボソッと言われて、
さっと本を選んで5分くらいで帰っちゃって。
あー、そういう感覚になっちゃうかって。
ターザン山本:ふーん。勉強なるねえ。
▲販売・喫茶併用時移行の看板の貼り替え①
館長:確かになあ、これは需要と供給がズレてるわって。
で、1年やったところで、店を半分に割って。販売コーナーと喫茶コーナーをわけたんです。
半分は販売だけで、そこは入場料かからないようにしたんです。
でやってるうちに、最初本とビデオだけだったんですが、せっかく販売専用のスペースをつくったんで、だんだん買取で、グッズも置いた方がいいんじゃないかって。
最初は図書館と銘打ってたので、文字や映像といった情報を扱うことにこだわってたんですが、
徐々に、フィギュアとかTシャツとかサイン色紙とか扱うようになって。
それを置きだして、お客さんを見てたら、そういうコレクターの人が世の中には結構いるんだということがわかって。
じゃあってことで、中古販売で、グッズも買い取ること大々的にやるようになって。
▲販売・喫茶併用時移行の看板の貼り替え②
でもマスクとか、わたしにとっては全然別世界だったんですね。
「これをプロレスラーでない一般人が集めて、どうするんだろう?プロレスごっこするのかな?」くらいの感覚だったので(苦笑)
たまに大量買取の中に、ポツンとドス・カラスのマスクが入ってたりしたんですが、いくらつけていいかさっぱりわからないというか。
でも、常連のお客さんの中から、「マスクを置けば、またそれを見て他にも売る人が出てくるから、そういう場を作る意味で取りあえず扱ってみてください」って
「全部マスクのこと教えますから」って言っていただいて。
じゃあやってみますってはじめたんです。最初はその人のコレクションから出してもらって。
確かに置いてたら、持ってくる人がポツポツ現れるんですね。
それをお客さんのほぼ言われるままに買い取って。
それをそのまま出したら、間違った情報やおかしな金額つけるとまずいんで、保留にしておいて、その常連のお客さん、そのころは毎日来て頂いてたんで、
その人に裏の非常階段のとこ入ってもらって、一枚一枚、マスクの見方を教えてもらうっていうのを続けたんですよね。メモ取りながら。
▲販売コーナーと喫茶コーナーに分けた頃の取材記事
で、その人の他にも、やっぱりコレクターの方々って、すごい知識を持ってらっしゃるので、常連さんみんなが先生というか。
各分野の専門家みたいなもんなんで、ミル・マスカラスのことはこの人、インディーマスクマンのことはこの人、タイガーマスクはこの人、
それぞれブレーンになっていただいて。
マスク以外もそうですね。本当にすごい人がいっぱいいるんですよね。
日本で行われたプロレスの全団体のパンフレット、力道山以前のものから現代まで、ほぼほぼコンプリートしている方とか。
80年代以降あらゆるレスラーに直接サインをもらい続けている人。
市販で発売されたVHSは全部コンプリートしている人。
団体が使った本物のベルトばっかり100本くらい集めている人とか。
基本そういう人たちは、自分が決めた守備範囲は完璧に集め切ろうとするんです。それが当然というか。
それぞれの我流の世界を極めようとするんですね。コレクター道というか。
そういう人たちは、こだわりがすごく、まさに「個」で生きてるので、やっぱり話すと面白いですし、学ぶこと多いんです。
お店をはじめて全国のスーパーマニアの人たち一人一人とのつながりができたこと。
それが闘道館の最大の財産ですね。
闘道館の20周年っていったときに、まずまっさきに頭に浮かぶのは、全国にいる個性豊かないろんなお客さんの顔が浮かんでくるんですよね。
なかなか表に出たがらない方が多いし、公にはできない事もたくさんあるんですが、いつか機会があったらプロレススーパーマニア列伝みたいな形で紹介できたらなあって(笑)
きちっと紹介したらめちゃくちゃおもしろい人たちばかりなので。
ターザン山本:スーパーマニア列伝!うん。それはいつかやるべきだね。絶対おもしろいよ。
▲徐々に館内は雑然と
館長:そういう多くのブレーンに助けられながら、どんどんモノが増えてきたんです。
そうやってくうちに、販売コーナーがスペースを広げ、逆に喫茶コーナーがだんだん狭くなって、閲覧用に置くスペースも少なくなってきたので、
5年目くらいで、喫茶コーナーを完全に辞めて、中古販売に特化するように業態の舵を切りなおしたんです。
まあ、喫茶スペースをなくすことは、寂しかったんですが。
諸行無常、現実の需要に合わせて、変化していこうって。
これは石井館長が「進化する空手」って言ったように、闘道館は「深化する業態」なんだと。より深くプロレス格闘技の古物の世界を掘り下げて行こうって。
底なし沼の世界をモノで表現できる店にするぞって。
で、あるとき、6階がたまたま空いたということがわかって。それまで教会かなんかだったらしいんですが。
大家さんに直接お願いして、パッと抑えたんです。
それで中階段から5階6階がつながってスペースを倍増できた。
それが6年目の秋くらいだったと記憶してます。
▲充実してきた販売専用スペース
ターザン山本:そうだったね。広くなった。6階にバーッとショーケース置きだして、商品がどんどん増えていった。
館長:そうやって、やってるうちに、レスラーや関係者の方も、徐々に来てくれるようになって。
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