闘道館20周年記念特別対談
ターザン山本×闘道館館長
⑬闘道館オープン
館長:で、3月23日にオープンして。
その日は朝まず駅の東口にチラシ配りに行って、オープンの午前11時に一度店に帰ってきたんですが。
当然というか、オープン時間になっても誰もこないんです。
普通は最初のオープンっていったら、事前に告知を打って大々的ににやるんでしょうが、その段階ではチラシをすこし配っただけだったので、とてもひっそりしたオープンでした(笑)
で、すぐもう一度、今度は西口にチラシくばりにいって。
それから2時間くらいして、店に戻ってきたんですが、やっぱり誰もきてなくて(苦笑)
今日はもう一人も来ないかもなって考えだした頃に。
ガチャって。
はじめてのお客さんがきたんです!
松葉杖ついた人がガタっと入口を体で押し開けるように入ってきて。
うぉおー、お客さんきた!しかも、え、めっちゃ大変そう、松葉づえついている!?って。 あの最初の店舗は、ビルの入口からちょっと階段上がって中2階からエレベーターのって、5階だったじゃないですか。 だからよく上がってきたなあと。
なんとなく、今後の苦難を暗示してるような風景が飛び込んできて(苦笑)
ターザン山本:劇的なドラマだねえ。
館長:うわあ、入ってきたって(笑)泰代と二人でお客さんをガン見してたと思います(笑)こっちがビックリしたという。
ターザン山本:ビビったでしょう
館長:本当にお客さんが来てくれたんだっていう。自分たちがやってきたことが、まったく知らない人に届いて、その人がわざわざ足を運んで来てくれたって。
その日はオープン日なので、特別に無料開放していて、で雑誌を何冊か買っていってくれて。
とにかく嬉しかったですねえ。一番最初のお客さん。
ターザン山本:そりゃあ、忘れられないよ。
▲オープン初日、泰代がつけていた記録。自宅奥深くから20年ぶりに発掘!(笑)
館長:そうやってはじまったんですけど。
うまくいかない可能性があるのは、覚悟はしてたんですけど。
ターザン山本:だって、初めてやることだから、視界ゼロですよ。
館長:今振り返るとまず、ターゲットにするお客さんの想定がズレてたんです。
闘道館をはじめるのに一般的なプロレスが好きなサラリーマンとか、プロレスが好きな学生がメイン顧客だと想定していた。
水道橋を普段から利用しているプロレス好きなサラリーマンと学生を相手にすれば商売が成立するとうか、ベースがつくれると考えていた。
どっちかというと、他のプロレスショップさんよりも、他のまんが喫茶が近くにできたらそこと競合するんじゃないかとか、
ブックオフが水道橋駅前にできたらどう対抗したらいいかとか。
一般のまんが喫茶とかブックオフを競合相手として見てた。
ターザン山本:それはズレてませんよ。当たり前ですよ。一番シビアなこと考えてる。
▲最初の館内案内図
館長:でも、今思うと、もっとマニアックにいかなくちゃいけなかった。さっき話にでた、100人に1人に向けるのか、それとも1万人に1人へ訴えるのかの違いです。
わざわざ電車のって、新幹線のって、足を運んでくれるお客さんが本当のうちの背骨を支えてくれるお客さんだった。それが見えてなかったんです。
当初、オープンした時にチラシをまくんですけど、
一番最初にやったのは、JR水道橋の東口の朝の通勤サラリーマンに向けて毎朝くばってたんです(笑)
「プロレス図書館、オープンしましたあ!」って大声はりあげて(笑)近所にパン屋がオープンしたのと同じノリで(笑)
全然反応悪い(笑)
ターザン山本:ああ、それは反応ない。ゼロよ。
館長:中には、チラシ受け取ってくれる人もいるんですけども、間違ってるんですよね。ターゲットを。
ターザン山本:間違ってるね。世間を相手にしちゃダメよ。
館長:そう。で、自分はすごいプロレス好きで、ずっとプロレスを愛してきたファンのつもりだったんですけど。
よくよく考えてみたら、特に闘道館をはじめてお客さんたちを見てたら、みんな全国大会レベルのマニア度なんですね。特に常連さんたちは。
それにくらべて、私はクラスとか、せいぜい学校で一番くらい。県大会も出れないレベルだったなあと。井の中の蛙だったんです。
プロレスショップっていうと、チャンピオンさんは知ってました。大阪でもよく、なんばまでビデオを借りにいってて。
ウォー、これ全部プロレスと格闘技だけかあ、凄いなあって。うれしかったし。
東京出てきてからも、しばらくして、水道橋の西口に大きな店ができて、感動してって。
闘道館を思いついたときも、あのとき自分がチャンピオンさんで感動したような、そういうファン。
あのときの自分を感動させるような店ができたらいいんじゃないかなと。
クラスに一人くらいはいる、プロレス好きな人間にどうアピールできるかなって。
そういうイメージで考えてたんですけど。
▲オープン当時の館内風景①
ターザン山本:館長はプロレスファンのマニア的なものよりも、ビジネス脳の方が優先しているから。そういう発想になるんですよ。
館長:プロレスショップの先輩方はすごいマニアな方が多いので、そこは確かに少し毛色が違うんでしょうね。
ターザン山本:少し毛色が違う。毛色が違ってビジネス的なんです。マニアはビジネス的な感覚よりも、自己満足の世界を追求しちゃうから。
館長はそこはちょっと違って突っ走りながらも、いつも冷静に市場をみてるわけです。
館長:でも知識の量ってすごく財産になりますけどね。
ターザン山本:知識の量とビジネスは比例しない。もっとリアリズムだから。
館長:まあ。確かに知識だけでも厳しいですよね。商売って、本当ルールが総合に近いというか。
なんでもありみたいなとこあって、思わぬところに、いっぱい落とし穴があるので、どっかがボトルネックになると、すぐ極められたり、KOされちゃうというか。。。
で、まあ3月23日オープンして、やっぱりあんまりお客さんこないなあって。
でもそのときは春休み期間だったんで、4月に学校がはじまれば、近所の日大の学生がたくさんきてくれると思ってて(苦笑)
4月10日くらい?それまでは我慢だって、春休みが開けるまでが頑張り時だって、そこを超えれば、いっぱいお客さんがくるはずって。だって、日大は何万も学生がいて、そのうちの50人か100人に一人の週プロを買うようなプロレスファンが来てくれたら、それだけで何人来るんだって皮算用で(笑)
で、入学式とかなったら、店の前の道路がもう、ナガヤビルの5Fの店の窓から見下ろしたら、学生でビッシリと大大行列になっている。
それなのに、そんなに人があふれているのに、誰一人闘道館には上がってこない。
下に看板とのぼり、出してるのに。
あれぇ~、おかしいなあ、一人もこうへんわあって。なんでだあ~?って(笑)今思うと、そらそうですよね。
ターザン山本:おもしろいねえ。そりゃそうですよ。
▲オープン当時の館内風景②